チェスの駒の動き方と特別なルール:序盤の原則、基本の詰み、将棋との違いまで
チェスの駒は6種類です。動きそのものは覚えやすいのですが、キャスリング、アンパッサン、プロモーションという3つの特別なルールと、 ステイルメイトなどの引き分けの決まりを知らないと、思わぬところで勝ちを逃します。
この記事の盤面図は、Asobi Loungeのチェスがすべての対局で使っているルールの判定(chess.js)で作りました。 駒の動きと特別なルールに加えて、序盤の考え方、キングとクイーンでの詰ませ方、将棋との違いを、サイトのCPUどうしを対局させた結果と合わせて解説します。
盤と駒の並び
チェスは8×8マスの盤で、白と黒が16個ずつの駒を持って戦います。先に指すのは白です。 相手のキングに逃げ場のない王手(チェックメイト)をかければ勝ちで、駒を取っても自分の駒としては使えません。
並べ方で間違えやすいのは、クイーンの位置です。白のクイーンは白いマス(d1)、黒のクイーンは黒いマス(d8)に置きます。 盤の向きは、右下のマスが白になるように置きます。
6種類の駒の動き
| 駒 | 動き | CPUの点数 |
|---|---|---|
| キング(K) | 周りの8マスに1マス。取られる(チェックメイト)と負け | ― |
| クイーン(Q) | 縦・横・斜めにどこまでも | 900 |
| ルーク(R) | 縦・横にどこまでも | 500 |
| ビショップ(B) | 斜めにどこまでも(ずっと同じ色のマスを動く) | 330 |
| ナイト(N) | 縦2・横1、または縦1・横2の位置へ跳ぶ。間の駒を飛び越えられる | 320 |
| ポーン(P) | 前に1マス(最初の1回だけ2マスも可)。取るときは斜め前に1マス | 100 |
点数は、このサイトのCPUが駒の損得を判断するときの値で、ポーン1枚を100としています。 ビショップ(330)をナイト(320)よりわずかに高く数えているのが特徴です。 対局画面の名前の横には、取った駒と、ポーン1・ナイト3・ビショップ3・ルーク5・クイーン9で数えた駒の差(「+4」など)が表示されます。
盤の真ん中のd4に駒を1つだけ置いて、動けるマスを数えると、ナイト8、ビショップ13、 ルーク14、クイーン27でした。ナイトは隅のa1に置くと2マスしか動けません。 「ナイトは端に置くと弱い」と言われるのはこのためで、序盤はc3・f3(黒ならc6・f6)のように中央へ向けて出すのが基本です。
ポーンは、前に進むことと駒を取ることで向きが違う、ただ1つの駒です。 下の図のd2のポーンは、d3・d4に進むか、斜め前のe3にいる黒のナイトを取れます(合わせて3通り)。真正面に駒があると、ポーンは前に進めません。
3つの特別なルール
キャスリング
キングを2マス横に動かし、同じ側のルークをキングの反対側に移す手です。1手でキングを端に寄せて守り、ルークを中央に出せます。 次の条件がすべてそろったときだけ指せます。
- キングと、そのルークが、まだ1度も動いていない
- キングとルークの間に駒がない
- キングがチェックされていない
- キングが通るマスと止まるマスが、相手の駒に攻撃されていない
上の図は、このサイトのCPUが持っている定跡の1本目(ルイ・ロペス)を、白がキャスリングするところまで進めたものです。 キング側へのキャスリングは「O-O」、クイーン側(キングがc1、ルークがd1へ移る)は「O-O-O」と書きます。
アンパッサン
相手のポーンが最初の2マス進みで自分のポーンの真横に来たとき、その直後の1手に限り、1マスだけ進んだものとして斜めに取れるルールです。 取ったポーンは、相手のポーンがいたマスではなく、その後ろのマスに進みます。
プロモーション
ポーンが相手側のいちばん奥の段に着くと、クイーン・ルーク・ビショップ・ナイトのどれかに必ず変わります。 このサイトでは、ポーンを奥の段に動かすと4つの駒が並び、選んだ駒に変わります。ほとんどの場面ではクイーンを選びますが、 クイーンにすると相手が動けなくなって引き分け(後で説明するステイルメイト)になる場面では、ほかの駒を選ぶこともあります。
序盤の3つの原則と、CPUの定跡
序盤の定跡を覚えていなくても、次の3つを守れば大きく不利になることはまずありません。
- 中央を取る:d4・e4・d5・e5の4マスを、ポーンや駒で押さえます。中央にいる駒ほど、動けるマスが増えます。
- ナイトとビショップを早く出す:同じ駒を何度も動かさず、まだ動いていない駒を1つずつ戦える場所へ出します。
- 早めにキャスリングする:キングを中央に残したまま戦いが始まると、真ん中の筋が開いたときに攻められます。
イタリアン・ゲームは、白が3手でポーンを中央に出し、ナイトとビショップを展開して、次にキャスリングできる形です。3つの原則がそのまま入っています。 もう1つの図は、白がクイーンとビショップで黒のf7を狙う、わずか4手のチェックメイトです。黒は3手目でナイトを出すより先に、g6などでクイーンを追い払うかf7を守る必要がありました。 序盤にクイーンを早く出すのは本来よくない手ですが、狙いを知らないと、このように一瞬で負けます。
このサイトのCPU(Lv.2〜4)は、最初の数手を定跡の手順から選びます。持っている定跡は20本で、1手目は1.e4が11本、1.d4が6本、1.c4が2本、1.Nf3が1本です。 1.e4 e5ならルイ・ロペスやイタリアン・ゲーム、1.e4 c5ならシシリアン・ディフェンス、1.d4 d5ならクイーンズ・ギャンビット、という代表的な形が入っているので、 CPUと何局か指すうちに、名前の付いた序盤を一通り見ることになります。
終盤:キングとクイーンで詰ませる
駒が減った終盤では、キングも攻めに加わります。最も基本的なのが、キングとクイーンで相手のキング1つを詰ませる形です。 手順は、クイーンで相手のキングが動ける範囲を少しずつ狭めて盤の端へ追い、自分のキングを近づけ、最後にキングに守られたクイーンでチェックする、という流れです。
ステイルメイトの図は、クイーンだけで追い詰めすぎた失敗例です。手番の側がチェックされていないのに指せる手がない状態をステイルメイトと呼び、チェスでは引き分けになります。 圧倒的に有利でも、相手に動けるマスを1つ残しながら自分のキングを近づけるのが、確実に勝つための順番です。 ほかに、同じ局面が3回現れた場合、駒を取らずポーンも動かさない手が双方50手続いた場合、詰ませるだけの駒が両方にない場合も引き分けです。
CPUでも50手ルールに引っかかる
詰ませ方の手順を知っていることがどれだけ大切かを確かめるため、白のキングとクイーン対黒のキングだけの局面をランダムに50通り作り、 白をこのサイトのCPUの各レベル、黒をLv.4に指させました。同じ50局面を4つのレベルで使っています。
| 白 | 詰み | 50手ルール | その他の引き分け | 詰みまでの手数 |
|---|---|---|---|---|
| Lv.1 | 1 | 20 | 29(うち28局はクイーンを取られた) | 40手 |
| Lv.2 | 33 | 15 | 2 | 14手 |
| Lv.3 | 42 | 7 | 1 | 13手 |
| Lv.4 | 37 | 12 | 1 | 13手 |
ステイルメイトは200局で1度もありませんでした(CPUは読みの中でステイルメイトを引き分けとして数えるので、勝っている側はその手を避けます)。 代わりに目立ったのが50手ルールです。キングとクイーン対キングは、正しく指せばどの局面からでも10手以内に詰ませられることが知られている終盤ですが、 このサイトのCPUは決まった手順を持たずに読みだけで指すので、Lv.3で50局中8局、Lv.4で13局が詰ませ切れずに引き分けになりました。 Lv.1は、クイーンを相手のキングの隣に置いて取られる失敗が28局ありました。 キングとルーク対キングでも、Lv.4が詰ませたのは50局中34局でした。人が指すときも、手順を覚えておかないと同じことが起こります。
CPUどうしの対局で分かったこと
このサイトのCPU(4段階)と同じプログラムをパソコン上で動かし、強さの違う組み合わせは先手と後手を1局ごとに入れ替えて、決着まで対局させました(2026年10月、合計440局)。 勝ち負けと引き分けはchess.jsで判定しています。
| 組み合わせ | 対局数 | 結果 | 平均手数 |
|---|---|---|---|
| Lv.1 対 Lv.2 | 100局 | Lv.2の100勝 | 38.4手 |
| Lv.2 対 Lv.3 | 100局 | Lv.3の99勝1引き分け | 70.3手 |
| Lv.3 対 Lv.4 | 40局 | Lv.4の26勝5敗9引き分け | 115.3手 |
| Lv.2 対 Lv.2 | 200局 | 白91勝・黒94勝・引き分け15 | 128.2手 |
- 1段階上のCPUはほぼ確実に勝つ。Lv.3とLv.4の間だけは差が小さく、引き分け(すべて同じ局面の3回繰り返し)が9局ありました。
- 白と黒の差は見えなかった。Lv.2どうしの200局では白91勝・黒94勝で、ほぼ同じでした。Lv.3対Lv.4の40局でも、白の18勝に対して黒が13勝と、はっきりした差はありません。
- 強いCPUほどキャスリングする。キャスリングをした対局の割合は、Lv.1が6%、Lv.2が46%、Lv.3が79%、Lv.4が78%でした(定跡の手順に含まれている場合も数えています)。序盤の3つめの原則どおりの傾向です。
将棋との違い
チェスと将棋は、どちらも古代インドのチャトランガという遊戯から分かれたと考えられている、いわば親戚どうしのゲームです。 ただ、遊んでみると性格はかなり違います。いちばんの違いは、取った駒を使えるかどうかです。
| 項目 | チェス | 将棋 |
|---|---|---|
| 盤 | 8×8マス | 9×9マス |
| 駒 | 6種類・1人16個 | 8種類・1人20枚 |
| 取った駒 | 盤から消える | 持ち駒として打てる |
| 駒が変わる | ポーンだけ(奥の段で4種類から選ぶ) | 6種類(相手側の3段で成る。成った形は決まっている) |
| 指せる手がないとき | ステイルメイトで引き分け | 実戦ではまず起きない |
| 最初の局面で指せる手 | 20通り | 30通り |
| 1局面あたりの指せる手(CPU対局の平均) | 約27通り(440局) | 約76通り(60局) |
| 引き分けの多さ(CPU対局) | Lv.2どうし200局で15局、Lv.3対Lv.4の40局で9局 | 60局で2局(千日手) |
チェスは駒が減るほど局面が単純になり、終盤は「詰ませるだけの駒が残っているか」の勝負になります。引き分けが多い理由の1つです。 将棋は持ち駒を空いているマスに打てるぶん指せる手が多く、CPUの対局でも1局面の指せる手はチェスの3倍近くありました。 クイーンは将棋の飛車と角を合わせた動き、ルークは飛車、ビショップは角と同じですが、将棋の金・銀・桂・香に当たる駒はチェスにはありません。 将棋の上達の順番は将棋の上達法で解説しています。
このサイトで練習する
Asobi Loungeのチェスは、AI対戦と「ふたりで対戦」(1台の端末で交代に指す)なら、ログインせずにすぐ遊べます。 ランダムマッチ(持ち時間10分+1手ごとに5秒)とルーム対戦(持ち時間を選べる)はオンライン対戦なので、Googleアカウントでのログインが必要です。 友達を招待して遊ぶには、相手もアカウントを作成し、フレンド登録が必要です。


- 色を選べる:白・黒・おまかせから選べます。白で序盤の3原則を試し、慣れたら黒で受ける側も練習しましょう。
- 待った:直前のAIの手と自分の手を戻して、自分の手番からやり直せます。キャスリングの条件やアンパッサンを試すときにも便利です。
- ヒント(1局に3回):Lv.4とほぼ同じ深さまで読んで、おすすめの1手を矢印で示します。
- ルール:対局中でも「ルール」ボタンで、駒の動きや特別なルール、引き分けの条件を確かめられます。
上の対局データのとおり、Lv.1は気まぐれに指して駒をただで渡すことも多いので、駒の動きを覚えたばかりの練習相手に向いています。 Lv.2に勝てるようになったらLv.3へ。Lv.3は5手先まで読むので、駒をただで取られる手はまず見逃してくれません。終盤まで有利に進めたら、50手ルールに気を付けながら、キングを寄せて詰ませる練習をしてみてください。
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